まるたの記録

起こったこと、思ったこと。そして、愛の記録。といいつつ読書記録がメイン。

(17)20210907

 『マカン・マラン』を読み終えた。大事に大事に読み終えた。この本最後の料理は1週間かけて材料を追加していくスープだ。常連たちが材料を用意し、店の主人シャールの弟分であるジャダが調理を進める。ゆっくりゆっくり作る過程を、ゆっくりゆっくり読んだ。
 長い時間をかけて作るスープはアドベントスープと呼ばれていた。クリスマスのアドベントカレンダーになぞらえているらしい。日が進むにつれてミニギフトを手に入れたり、材料を追加したりするのはとても楽しいだろうなと思う。私の場合、カレンダーを眺めて今か今かと待つ行事は自分の誕生日だ。といっても、何をするでもなく「あと○日だ」と思うだけだけど。誕生日当日だって、何をするでもない。おめでとうと言われることも少ない。それでもなんとなく楽しみなのは、小さい頃の嬉しかった記憶たちのおかげだ。普段は「お菓子は2桁の値段のものを1つだけ」(あの頃は消費税が今より低かったから駄菓子でなくても2桁の値段のお菓子は存在した)なんていう親が、誕生日には自分の欲しいものをくれる。一緒に選ぶというよりは普段欲しがったものをくれていた気がする。よく私のことを見ていてくれたんだなぁと思う。
 かなり話が変わったが、アドベントスープの香りに満ちる「マカン・マラン」は店の主人シャールの帰還を待っている。実をいうと、この本には続編がある。なんともメタいがそれによって私はシャールが戻ってくることを知っている。それでもドキドキしながら読んだ。戻ってきてほしいという願いが、きっと戻ってくるという予感がそうさせたのだろう。